元青色の海月

思考の出力先

ギロチンの足音が聞こえる

職場の休業が1ヶ月延長されることが決定された。

仕事が全くない時間を4月から3カ月弱の間過ごす事になる。

1年の4分の1何も出来ない、どうしようも出来ないという事態に直面している。

この期間のお陰で不幸中の幸いと言うべきか身体的精神的に徐々に回復して来ている。

この期間で苦痛から解放され、更に持て余す位に時間を手にした事により真面な思考を持って自分自身について客観的に捉え主観的に考察を行った。

一杯一杯の状況下で興味の矛先を向けていた事柄に対しての多くの関心を失っていることに気が付いた。

 

1つ目はファッションへの関心

自分に自信が無いから少しでも気に入った良い物を身に着けて自分の外見の価値を上げようとした。顔もスタイルも内面も悪い為、それを隠そうとするかのように服や装飾品にお金を使っていた。外身を綺麗に着飾っても中身は変わるはずがないただの「豚に真珠」状態であった。

この1カ月強の間、一度もインターネットで好きなブランドのHP及びショッピングサイトのページ閲覧を行っていない。

「購入する余裕がない」と片付けてしまったらそこでお話終了だが、一番の心情として「ダサくなければそれで良い」と思うようになった。

勿論、最低限の容姿配慮はするが、無理して自分を良く見せようと思わなくなった。

そればかりか、服、装飾品に対する関心が無くなったのだ。

この服が可愛い、格好良い等の感想、着てみたいという欲望が影を潜めたのだ。

よくよく考えると上京までファッションのFの字も知らなかった人間が、人口過密するコンクリートジャングルに放り込まれ、田舎者と小心者が相俟った自意識過剰により「どうにか都会色に染まって人混みの一部として紛れて目立たないようにしよう」という考えを持ち、どうにか変わろうとしていた。これが無意識のストレスになっていたのである。

 

2つ目は食への好奇心

休業期間中に不健康な食事を止める事と減量を行う為に食事制限と食事規則を自分に課した。

この二項を行うことにより体内時計のリセット及び調整と減量に成功した。

基本的にほぼ毎日同じ時間帯に同じ様な物を食べ続けるだけであるが、これにより自炊率を上げ、ファストフードやジャンクフード等の摂取を防ぐこと兼ね合いも込めていた。

自分で作る料理を美味しいと思ったことがないが、自分が食べれない味付けをすることはないのである種安定した供給をする事が出来た。

元々嫌いな物が多く、好きな物が少ない、気に入った物を飽きるまで半永久的に食べ続ける偏食家であったため毎日同じものを食べ続けることは苦どころか楽であった。

この様な食生活を当たり前にして過ごした結果、「急に〇〇が食べたくてどうしようない」っと言う様な衝動的食欲が湧きにくくなった。

ただ身体は正直な物で日常で摂取しないが身体に必要な栄養素を持つ食材を欲することがある。その場合は致し方なく非日常として摂取している。

体重が落ちた為、好きだったお酒が飲めなくなった。

元々下戸体質でほぼほぼ飲めなかったのだが、味が好きな物もあり4年という長い歳月をかけてある程度飲めるようにしたのだが、この1年間で体調を崩し飲めない期間が続いた。そして減量し胃が小さく体積が少なくなった身体はアルコールを入れると蕁麻疹を発生させ拒絶するようになった。

身体が拒否反応を示す物を摂る事は止めたら自ずとお酒への興味が無くなった。

この1カ月で食に対する好奇心と好きな物を失ったのである。

 

 

3つ目は他人との関わり

休業期間に 引き籠りと出不精を更に拗らせたしまった。

それにより最低限、不必要な他人との関りを取る事を自然としなくなった。

休業以前は人と関わる事が苦でしかたなく、ストレスとなっていたが、接客業の為無理して色々な人と関わるようにしてどうにか克服しようとしていた。

その結果何度か体調を崩してしまっていた。

心身が健康に成るに連れて無理をして人と関わることの重要性の無さに気付き、心を許す人達とさえ関わっていれば幸せなどと気が付いた。

そして心身が健康の状態で他人と関わった時に「苦」ではないと言う事を実感した。

無理矢理に慣れる必要はなかった。人に心を開くのに途方もない時間が必要な自分が無理をするとただただ壊れていくだけだったと言う事実。

だから心身の健康を保つために無理な関りを避けることを決心した。

接客業を生業とする人間の発想ではない。

 

大きくこの3つが自分の中から消えた。

健康にはなったが人間らしさが失われた気がする。

生きる為の活力がなく、必死に生きようと思わず「死ぬときは死ぬ」がモットーになってしまった。

危機的状況に面しているはずなのに何の焦りもなく、平常に過ごしてしまっている。

健康になったはずなのに「死」と言う物が近づいて来ている気がする。